甲状腺は体内のさまざまな機能をコントロールする大事な器官です。その甲状腺の働きが正常でない場合に、甲状腺機能亢進(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)を発症する可能性があります。
今回はそれぞれの病気の症状をもとにしたセルフチェックリストをご紹介します。また、セルフチェックリストの有効な活用方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状
バセドウ病の症状は多岐にわたりますが、典型的なものとしては、体重減少、動悸、手指の震え、過度の発汗、疲労感、不眠などが挙げられます。また、甲状腺の腫れ(甲状腺腫)や目の突出(眼球突出)も特徴的な症状です。
診断方法
バセドウ病の診断は、主に臨床症状と血液検査によって行われます。血液検査では、甲状腺ホルモンのレベル(特にT3、T4)と、TSH(甲状腺刺激ホルモン)のレベルを測定します。通常、甲状腺ホルモンのレベルが高く、TSHのレベルが低い場合、甲状腺機能亢進症が疑われます。さらに、TSH受容体抗体の検出によって、バセドウ病の確定診断が行われます。
参考:一般財団法人 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2021」
甲状腺機能低下症(橋本病)の症状
橋本病に伴う典型的な症状には、疲労感、寒がり、肌の乾燥、便秘、記憶力や集中力の低下などがあります。また、甲状腺の腫れ(甲状腺腫)も見られることがあります。これらの症状は徐々に発展するため、初期には気づきにくいことが多いです。
診断方法
橋本病の診断には、血液検査が中心となります。具体的には、甲状腺ホルモン(T3、T4)の低下と、TSHの上昇を確認します。また、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)や抗甲状腺球蛋白抗体(TG抗体)など、特定の自己抗体の存在も診断のために調べられます。
参考:一般財団法人 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2021」
甲状腺機能亢進(バセドウ病)と甲状腺機能低下症(橋本病)のセルフチェックリスト
ここからは甲状腺機能亢進(バセドウ病)と甲状腺機能低下症(橋本病)のセルフチェックリストをご紹介します。
甲状腺機能亢進(バセドウ病) | 甲状腺機能低下症(橋本病) |
暑がりである | 疲れやすくなった |
体重が減少した | 以前より寒がりになった |
イライラ感があり、落ち着かない | 体重が増加した |
目つきがきつい | 眠気がありボーっとすることが多くなった |
微熱が続いている | 汗が出なくなった |
動悸や息切れがある | 食欲がない |
排便回数が増えた | 便秘がちになった |
口がよく乾く | 忘れっぽくなった |
手足がふるえる | 声がかれ低くなったように感じる |
髪の毛が抜ける | 息切れがする |
首が腫れている | 皮膚がカサカサして乾燥している |
疲れやすい | 首が腫れている |
それぞれ、12項目でセルフチェックを行えます。2つ以上の項目に該当すれば、要注意と言えます。また、5〜6つ以上に該当する場合は、早めに受診をおすすめします。
チェックリストの内容と目的
セルフチェックリストは、個人が自身の身体的変化や症状を観察し、記録するために用いられます。このリストは、甲状腺の機能異常によって引き起こされる可能性のある一連の症状についての質問から構成されています。主な目的は甲状腺疾患の早期発見です。
結果の解釈
セルフチェックリストの結果は、甲状腺機能障害の可能性を示す指標として役立ちますが、これだけで病状を診断するものではありません。セルフチェックの結果によらず、不安な場合は、専門医による正式な診断が必要です。
また、チェックリストの結果は、医師との相談時に症状を説明するための参考資料としても活用できます。
セルフチェックリストをより有効に使う方法
セルフチェックリストは単に自分の病気の疑いを確認するだけでは効果的な活用とは言えません。ここでご紹介する方法をもとに、より有効に使いましょう。
セルフチェックリストの効果的な活用方法
チェックリストを日々の健康管理に効果的に活用するためには、各項目を丁寧に記録し、規則正しく追跡することが重要です。
例えば、体重、食欲、睡眠の質、気分の変化、皮膚の状態など、細かい変化にも注意を払いましょう。記録する際には、具体的な症状の発生頻度や程度、それらが日常生活に与える影響なども含めて詳細に記入します。
これにより、健康状態の総合的な把握が可能になり、必要に応じて適切な対処(受診など)が行えるようになります。
セルフチェックの頻度と期間
セルフチェックの頻度は、個人の状況や健康状態によって異なります。通常、甲状腺疾患のリスクが高い場合や、既に症状がある場合は、週に1回以上のチェックがおすすめです。バセドウ病や橋本病に罹患した場合においても数週間や1か月程度に1回は検査が推奨されているからです。
健康状態が安定している場合でも、月に一度はセルフチェックを行い、長期的な健康状態の変化に注意を払うことが重要です。特に、ストレスの多い時期や生活習慣が大きく変わった時には、より頻繁にチェックを行うと良いでしょう。健康診断を自分で行うようなイメージでセルフチェックを行ってみてください。
セルフチェックリストの結果を保存
セルフチェックリストの結果を残しておくことで、体調の変化に対する自己認識が高まります。これには、記録をデジタル化する、グラフや表を作成するなどが効果的です。このような視覚的な表現を用いることで、時間の経過と共に症状の傾向をより明確に把握できます。
また、定期的に医師にこれらの記録を見せることで、より具体的で効果的な医療アドバイスを受けることが可能です。
セルフチェックの継続
甲状腺疾患は徐々に進行することが多く、初期段階では症状が軽微であるため、定期的なセルフチェックの継続が重要です。これにより、症状の早期発見や、既に診断された疾患の状態のモニタリングが可能となります。
また、甲状腺疾患の症状は日々の生活習慣やストレスレベルによって変化することがあるため、これらの要因と症状の関連を理解するのにも役立つでしょう。
定期的な自己評価の方法
セルフチェックを効果的に行うためには、一定のリズムで継続することが重要です。例えば、毎週または毎月決まった日にチェックリストを記入することで、症状の変化を時間の経過と共に評価しやすいです。
チェックリストを記入する際には、その日の特別な出来事や感じたストレスなど、症状に影響を与える可能性のある要因も一緒に記録すると良いでしょう。
バセドウ病眼症でお悩みの際は当院まで
今回はバセドウ病や橋本病のセルフチェックリストなどをご紹介しました。セルフチェックの結果からバセドウ病や橋本病が疑われる場合は、早めに受診しましょう。
バセドウ病にかかっている場合は、眼球突出の症状が現れたりします。当院では元ステロイドパルス療法など、ダウンタイムの少ない治療方法を提供しています。バセドウ病眼症にお悩みの際は、ぜひ当院にご相談ください。