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バセドウ病で「目が飛び出る」というのは大げさな表現?発症率や症状について解説

この記事では、医師の立場からバセドウ病で目が飛び出るという症状(眼球突出)についてまとめています。

結論から述べると、「バセドウ病で目が飛び出る」というのは大げさな表現です。このような症状が出る方は3割ほどで、見た目が大きく変わってしまうケースは少ない傾向にあります。

また、眼球突出がある=バセドウ病というわけではありません。そのため、ほかに目が飛び出る可能性のある病気や、バセドウ病との違いについてもまとめています。

「バセドウ病によって目が飛び出る」と聞いたことがあり不安になっている方や、すでに医師から「バセドウ病眼症の疑いがある」と言われて情報収集している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

そもそもバセドウ病眼症は甲状腺ホルモンが過剰になる病気

バセドウ病と目が飛び出るという症状の特徴や関係性について解説する前に、この病気について簡潔に説明します。

そもそもバセドウ病とは、甲状腺ホルモンが過剰になる病気のことで、甲状腺機能亢進症の代表例です。疲れやすさや汗の過剰な分泌、食欲亢進(食欲の増加)、体重減少、血圧上昇といった症状が現れるのが特徴です。

甲状腺機能亢進症の主な症状
  • 疲れやすさ
  • 汗の過剰な分泌
  • 食欲亢進
  • 体重減少
  • 血圧上昇

このうち、目に炎症が起きている状態のことをバセドウ病眼症または甲状腺眼症と呼びます。

バセドウ病によって目に症状が起きることをイメージできない方もいるかもしれません。しかし、目の周りの組織にも甲状腺と共通している組織(TSH受容体)があります。免疫反応によってこのTSH受容体に炎症が起こると、目が飛び出る、まぶたが腫れるといった症状が現れることがあるのです。

甲状腺機能亢進症と同時期に起こる場合が一般的ですが、目の症状が起きてから甲状腺機能亢進症が現れるケースも見られます。

また、甲状腺機能亢進症の症状がないものの目だけに症状が現れることがあり、この場合はバセドウ病と診断されるケースが一般的です。

「バセドウ病で目が飛び出る」というのは大げさな表現

バセドウ病で目が飛び出すほどの症状(眼球突出)が出ることは稀です。というのも、眼球突出が起こる割合は3割程度だとされているためです。

そもそもバセドウ病の眼球突出は、眼球を動かす筋肉や眼球の後ろにある脂肪が増えることで目が押し出されたような状態になることを指します。文字通り目玉が飛び出すことを想像する方もいるかもしれませんが、実際にはこちらも大げさな表現です。

ただし眼球突出と同時にまぶたが腫れたり、上まぶたが下がりにくくなったりすることがあり、見た目が変わってしまう方がいることは事実です。

なお、眼球がどれくらい飛び出しているかは検査によって確認可能で、下記の表のとおり重症度が判断されます。

重症度眼球突出度
軽度15~18mm未満
中等度18~21mm未満
高度21mm以上
障害なし15mm未満

参考元:甲状腺眼症診療の手引き Digest 版 

このほかにも診断基準があり、症状やその重症度に合わせて免疫抑制療法や放射線照射療法、眼科的な機能回復手術といった治療法が選択されます。

バセドウ病による目の異常が出ている場合でも、早期の診断・治療をすることで悪化の予防や改善が期待できます。「目が飛び出ている感じがする」「見た目に違和感がある」という場合は病院を受診するようにしましょう。

眼球突出以外にバセドウ病で起こりやすい症状一覧

先ほど「バセドウ病で「目が飛び出る」というのは大げさな表現」だと説明しましたが、眼球突出以外にも以下のような症状が現れることがあります。

症状症状の特徴
痛み目や目の周囲の痛み
視力低下ものが見えにくくなる
複視ものが重なって見える
視野欠損視野が狭くなったり欠けたりする
流涙なみだが止まらなくなったり、なみだ目になったりする
眼瞼後退まぶたがつり上がる
眼瞼腫脹まぶたが腫れる
結膜浮腫目の表面を覆っている透明な粘膜が充血したり腫れたりする
涙丘の発赤・腫脹目頭の内側にあるピンク色の部分が赤くなったり腫れたりする
兎眼まぶたを完全に閉じられない
Graefe 徴候下を見つめるとき、隔膜の上に白目が残る状態になる
眼球運動障害眼球を動かす外眼筋の運動障害が起こる
角膜障害びらん、潰瘍、混濁、壊死、穿孔など、角膜に起こる症状
視神経症視神経に障害が起こり、急激な視力の低下や視野が欠ける
網膜障害網膜の血管に障害が起こり、視界がかすんだり視力が低下したりする

これらの気になる症状がある場合は、早めに病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。

参照元:甲状腺眼症診療の手引き Digest 版

バセドウ病以外で目が飛び出ることはある?

成人の場合、目が飛び出るという症状が出る原因としてもっとも一般的なものがバセドウ病です。そのため目が飛び出ているように見える場合はバセドウ病が疑われますが、稀に他の病気が原因の場合もあります。

目が飛び出る可能性のある病気は、以下のとおりです。病名や症状についてまとめましたので、参考にしてみてください。

目が飛び出る可能性のある病気現れやすい症状特徴
バセドウ病目への症状痛み涙目乾燥刺激感光への過敏複視(ものが重なって見える)視力障害
目以外の身体に起こる症状動悸不安食欲亢進(食欲増加)体重の減少下痢暑さに耐えられない汗の増加不眠
目への症状は両方の目に現れる傾向がある
眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)
※眼球が収まっている部分の組織に起こる感染症
目への症状赤み眼の奥の痛み眼を動かしたときの痛み眼の中や眼の周りがうずくまぶたの腫れや赤み眼をすべての方向に動かせなくなる視覚障害または視力障害
目以外の身体に起こる症状発熱副鼻腔への感染が先に起こることもある
目への症状は片方の目に現れる傾向がある。
また、副鼻腔や歯への感染が原因で起こることがある。
眼窩内の腫瘍(良性または悪性)または、血管の奇形などの腫瘤(こぶ)目への症状痛み片眼の視力障害または視力低下複視(ものが重なって見える)
目以外の身体に起こる症状頭痛
リンパ腫の場合、両方の目に症状が現れる可能性があるが、症状の多くは片方の目に起こる。
球後出血
※眼球が収まっている部分での出血
目への症状視力障害複視(ものが重なって見える)痛み目への症状は片方の目に現れる傾向がある。
目の手術や目のケガをした人、または出血性疾患のある人に見られる症状。

参照元:MSDマニュアル

表のとおり、眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)や眼窩内の腫瘍、球後出血の場合、片方の目に症状が出ることがほとんどです。

一方、バセドウ病による眼球突出の場合、両方の目に症状が現れる傾向にあります。

バセドウ病で「目が飛び出ている」などの症状がある場合は病院へ

バセドウ病では、通常「目が飛び出ている」といった顕著な症状が現れることは少ない傾向にあります。しかし目に現れる症状は多岐にわたるため、気になる場合は病院にかかることが推奨されます。

警戒すべき症状が現れた場合はすぐに受診をする

特に、以下のような自覚症状がある場合、すぐに病院を受診することを推奨します。

  • 視力障害や視力の低下
  • 複視(ものが重なって見える)
  • 目の痛みや赤み
  • 拍動性の眼球突出(飛び出た眼球が脈打つ)
  • 新生児や小児の眼球突出
  • 頭痛や発熱

病院では、問診や目の観察、MRI、またはCT検査、血液検査などを行い、原因の特定や治療を行います。

当院でも検査・治療を実施していますので、気になる症状がある方はお問い合わせください。

軽症だと思われる場合も検査を受けるのがおすすめ

先ほど警戒すべき症状について解説しましたが、軽症だと思っている場合も検査を受けることをおすすめします。

  • 目に違和感がある
  • 目が飛び出ている感じがする
  • まぶたがつり上がっている感じがする
  • 目が充血している、または腫れている感じがする

上記のように少しでも違和感がある場合は、なるべく早めに医師に相談してください。

バセドウ病で目が飛び出る症状が疑われるときは早めに治療を

しばしば「バセドウ病になると目が飛び出る」と言われますが、実際にはそこまでの症状が出るのは3割ほどです。眼球突出度は軽度・中等度・高度の3つに分類されますが、症状が軽度の場合でも「見た目が変わってしまった」と感じる方もいるかもしれません。

眼球がどれくらい飛び出ているのかは病院にて検査可能ですので、気になる場合はぜひ当院のカウンセリングにお越しください。

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