病気の予防効果も?!日光浴のメリットと重要性

「日光(紫外線)は皮膚がんの原因になるのでは?」と思われている方も多いのではないでしょうか?

紫外線の浴びすぎは健康を害する恐れもありますが、適度な日光浴には健康を促進する良い効果がたくさんあります。

日光浴はビタミンDの合成により骨を強くするほかに、近年では免疫機能向上や病気予防まで様々な効果があることがわかってきています。

本記事では日光を浴びるメリットとビタミンDの働き、効果的な日光浴の方法について解説していきます。

ぜひ、皆さんの健康促進にお役立てください。

目次

日光浴のメリット

紫外線は有害であると考えられがちですが、実は日々の健康に欠かせない重要な効果もたくさんあります。

以下では、日光浴を行うメリットをご紹介します。

ストレスの軽減

日光を浴びると、「セロトニン」の分泌量が増加します。

幸せホルモンとも呼ばれているセロトニンは、感情を穏やかにし、精神の安定にとても重要な役割を果たしています。セロトニンはストレスを軽減させ、うつ病などの精神疾患の予防にも欠かせません。

睡眠の質の向上

日光を浴びることは、体内時計(概日リズム)の調節にも大きく影響します。体内時計のバランスが崩れると不眠や日中の眠気、消化不良、精神不安定を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。

また、日光浴は睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の分泌を促進するため、睡眠の質の向上にも役立っています。

ビタミンDの生産

人間は日光を浴びることで、皮膚上でビタミンDを作り出すことができます。

ビタミンDの主な働きは、カルシウムの代謝調整です。ビタミンDは脂溶性で、食事から摂る場合は脂質と一緒に摂取すると効率よく吸収されます。

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日のビタミンDの摂取基準量は、18歳以上の男女であれば8.5マイクログラムが目安とされています。

厚生労働省が発表している令和元年の国民健康・栄養調査では、日本人のビタミンDの摂取平均量は6.9マイクログラムであることがわかっています。

さらに、東京慈恵会医科大学が2019 年 4 月から 2020 年 3 月までに行った調査では、日本人の98%がビタミンD不足に該当していたことが明らかになりました。

ビタミンDが不足すると

体内でカルシウムの吸収力が低下し、カルシウム不足となります。その結果、骨が弱くなる骨軟化症(小児ではくる病)を発症しやすくなります。

特に骨密度の低下している高齢者などの場合は、骨粗しょう症の発症により骨折を招くおそれもあるため注意が必要です。

また、妊娠中のビタミンD欠乏症は、子どもの自閉症スペクトラムの発症率を高める可能性があることがカナダのクイーンズ大学クイーンズ脳科学研究所の研究結果からわかっています。

さらにミシガン大学の研究では、ビタミンDが不足している子どもは体重と脂肪の増加のペースが速かったという結果から、肥満と関連しているとも考えられているようです。

ビタミンDを過剰摂取すると

血中のビタミンDの量が多くなりすぎると、吐き気や食欲不振、便秘、脱力感、体重の減少などの症状がみられる場合があり、腎臓にも負担をかけるおそれがあります。

しかし、ビタミンDが害を及ぼす原因は、サプリメントの過剰摂取によるものが多いようです。

人間の身体は、ビタミンDを作る量を制限できるため、日光浴のし過ぎが原因となってビタミンD中毒が起こることはありません。

ビタミンDの効果

日光浴でビタミンDが増加することで、物忘れが改善され、認知症の予防にも役立つことがわかっています。また、筋肉にも作用するため高齢者の筋力低下予防にも効果が期待できます。

さらに、ビタミンDと大腸がん罹患との関係についての多目的コホート研究の結果では、日光浴によるビタミンDの増加と大腸がんの関連はなかったものの、ビタミンDが少ないと大腸がんのリスクが高まるということがわかりました。

また、同研究でビタミンDとカルシウムの摂取で、糖尿病のリスクを減らせる可能性も示されています。

ビタミンDを多く含む食材は、サケやサンマ、イワシなどの魚類、しいたけ、きくらげなどのきのこ類があります。

しかし、食事から得られるビタミンDの量より、日光を浴びることで皮膚で作られるビタミンDの量の方が多いようです。

がんや重大な病気の予防の観点からも、ビタミンDが豊富な食材の摂取と合わせて、日常生活上で積極的に日光浴を取り入れるとよいのではないでしょうか。

日光の種類

太陽の光は、波長によって、赤外線、可視光線、紫外線の3つに分けられます。

紫外線(UV)は、A・B・Cの3種類があり、可視光線よりも波長が短いです(UV-Cは地表には到達しません)。

地表に到達する紫外線の9割はUV-Aで、残りの1割がUVBとなっています。

※日光浴による体内でのビタミンDの合成に関わっているのは、UV-Bです。

効果的な日光浴の方法

日光はただ浴びれば良いというわけではありません。

日焼けによる皮膚へのダメージを防ぐために、長時間浴び続けないこともポイントとされています。

日光浴は日陰で行っても効果がありますが、ビタミンDの合成に関わるUV-Bはガラスを透過できないため、屋内の窓越しでは日光浴の効果は得られないようです(UV-Aは透過するため、屋内であっても日焼けには十分注意が必要です)。

さらに日本では、沖縄県と北海道で2倍程度の紫外線量の違いがあります。

日光浴の時間の目安は、紫外線量の多い春夏には日陰で15分程度、紫外線量が少なくなる秋冬には30分程度が効果的です。

国立環境研究所では、落石岬、つくば、波照間の3か所の観測局において紫外線量の観測を行っています。

【参考資料】

国立研究開発法人 国立がん研究センター

厚生労働省 e-JIM ビタミンD

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【参考論文】

The Journal of Nutrition

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