がん免疫療法とは何か?解説

がん免疫療法とは

がん免疫療法とは、私たちの体にもともと備わっている免疫機能を利用した治療法であり、三大療法(手術療法、放射線療法、薬物療法)に次いで、第四のがん治療として知られているものです。

こちらでは、がん免疫療法について概要と代表的な治療法について解説します。

目次

がん免疫療法とは

がん免疫療法について、より具体的に解説すると、次のような治療法となります。

がん細胞を攻撃する免疫細胞や免疫抑制細胞を、体内または体外から誘導し、がん組織の破壊や増殖の抑制を行う治療法

そして、このがん免疫療法には、主に4つの治療法が含まれています。

  • 免疫チェックポイント阻害療法
  • エフェクター細胞療法
  • がんワクチン療法
  • 複合的免疫療法

これらの治療法には、免疫機能の中でも獲得免疫が利用されます。一方で、私たちの体には免疫機能を抑制させるメカニズムがあり、それを免疫抑制といいます。

身体のバランスを保つ働きがある「免疫機能」とは

免疫抑制には、いくつかの種類がありますが、特にがん細胞に関わる代表的なものとして、免疫チェックポイントを知っておきましょう。

免疫チェックポイントとは

免疫チェックポイントは、免疫機能のバランスを保つために、自分の免疫応答を抑制したり、過剰な免疫反応を抑制する分子です。また、発がんの過程においては、がん細胞が免疫細胞からの攻撃を回避し、増殖するために利用されています。

つまり、この免疫チェックポイントの働きにより、獲得免疫の中でも暴走したT細胞を抑えることができます。そして、T細胞の暴走が抑えられることで、体の免疫機能がバランスよく働くという仕組みが出来上がるのです。

しかし、がん細胞はこの免疫チェックポイント分子を利用して、免疫反応を回避する働きをします。そのため、免疫チェックポイントを阻害することで、がん細胞を抑えこむことができるでしょう。

このように、がん免疫療法は私たちの体に備わっている免疫機能を利用した治療法のため、他の抗がん剤治療などによる副作用症状が少ないというメリットもあります。

代表的ながん免疫療法について

ここでは、がん免疫療法として代表的な4つの方法を簡単にまとめています。

  • 免疫チェックポイント阻害療法
  • エフェクター細胞療法
  • がんワクチン療法
  • 複合的免疫療法

免疫チェックポイント阻害療法

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機能を抑制させる免疫チェックポイント分子だけをターゲットにします。

そして、免疫抑制機能を阻害させることで、がん細胞への免疫反応を高める作用がある治療方法です。

免疫チェックポイント阻害薬は、患者さんの免疫機能を利用した治療のため、効果の出方や持続期間には個人差があります。

主に、免疫チェックポイント阻害薬として臨床上使用されているのは、次のとおりです。

薬の種類薬の名前
PD-1阻害薬ニボルマブ(オプジーボ)、ペムプロリズマブ(キイトルーダ)
CTLA-4阻害薬イビリムマブ(ヤーボイ)
PD -L1阻害薬デュルバルマブ(イミフィンジ)、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)

それぞれの薬に対して、適応する疾患は限られていますが、近年適応できる疾患は広がっていることが特徴的です。

この免疫チェックポイント阻害薬により、免疫抑制機能が抑えられる仕組みになっていますが、そのために活性化した免疫が正常な細胞を攻撃するといった副作用が生じます。

効果と副作用を考慮して、治療をするか否か決定していくことになるでしょう。

エフェクター細胞療法

エフェクター細胞療法とは、患者さんの体内にあるT細胞そのものを利用する治療法です。

がん細胞への攻撃性を高めるために、患者さんのT細胞を取り出します。そのT細胞を体外で、がんを直接攻撃する高い能力を持ったエフェクター細胞(免疫細胞)を作り、再び患者さんの体内に戻します。

患者さんの血液から採取して再び戻すことができるため、確実にかつ大量にT細胞を作り出せる方法となります。

攻撃性の高いT細胞が体に入ることで、副作用も生じます。がん細胞を攻撃する際に大量のサイトカインというホルモンが過剰に分泌され、発熱や血圧低下、呼吸抑制をきたす場合があります

また、正常な細胞を攻撃してしまう場合もあり、入院して治療を受けることになります。

がんワクチン療法

がんワクチン療法は、がん抗原を利用してがん細胞を攻撃する治療法です。

がん抗原とは、がん細胞だけに特異的に発現するもので、免疫系が認識して攻撃できるものと言われています。

このうち、T抗原を用いて患者さんにワクチンを投与することで、体内のT細胞が活性化してがん細胞を攻撃するという仕組みになっています。

T細胞が活性化するために重要な役割を持つのが、樹状細胞です。樹状細胞は、がん細胞の特徴を覚えて、それを体内のT細胞たちに教えます。

すると、がん細胞を認識したT細胞はがん細胞を攻撃していくのです。

がんワクチン療法は、このがん抗原のワクチンを作ることになりますが、患者さんの血液から採取した樹状細胞を樹立させる必要があります。

体外で細胞を活性化・増殖させて、再び体内に戻すといった高度な医療を必要とするため、簡単に受けられる治療法ではないかもしれません。

複合的免疫療法

複合的免疫療法とは、がんの治療として確立されている方法を複数組み合わせて行う治療のことをいいます。

・がん免疫療法×がん免疫療法
・がん免疫療法×三大療法

がんの再発リスクを下げる!三大療法と免疫療法

がん免疫療法同士の組み合わせの場合は、免疫チェックポイント阻害薬を軸にした治療が基本となっています。

  • 免疫チェックポイント阻害薬×がんワクチン療法
  • 免疫チェックポイント阻害薬×エフェクター細胞療法

がん免疫療法とその他のがん治療を組み合わせた場合は、次のような治療があります。

  • がん免疫療法×分子標的薬
  • 化学療法×免疫チェックポイント阻害薬
  • 放射線治療×免疫チェックポイント阻害薬
  • 手術療法×がん免疫療法

どの治療法も、がん治療の組み合わせのため良い効果は期待できますが、当然ながら副作用も生じてしまいます。

副作用の他にも治療の順番や休薬期間、薬剤の投与量など、注意が必要な治療といえます。

まとめ

がん免疫療法は、自分の免疫機能を利用した治療法であり、4番目のがん治療として注目されています。

現時点では、検討の段階にあるものや臨床実績を積んでいるものなどさまざまです。

ただし、がんに対する治療法はこれからも進歩し続けていくため、効果が確立された治療法は出てくることでしょう。

その中で優れた効果があると言われている、がん免疫療法は患者さんの血液を採取したり、培養したりといった高度な医療と技術が必要な治療です。

しかし、がん再発を予防したいと考えている患者さんたちにとって、検討していただきたい治療法の一つと言えるでしょう。

当サイトでは、がん免疫療法の中でも「がんワクチン療法」について詳しくご紹介しています。治療法について理解を深め、専門の医療機関にご相談してみることをお勧めします。

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