PD-1抗体とは?臨床試験と成果や課題などを解説

「気になる事があれば話してみませんか?」小さな心配も、安心につながる一歩です。無理な勧誘などは一切ございませんので、がん治療でお困りの方はお電話またはLINEでお気軽に当院にお問合せ下さいませ。

本ページは、一般的な内容を基に作成していますが、個々の症状や治療法には違いがありますので、具体的な治療については必ず専門の医師やクリニックにご相談ください。

がんと診断されると、不安や混乱でいっぱいになることは当然です。

しかし、近年の医学の進歩は、がん治療において期待をもたらしています。

PD-1抗体を活用した免疫療法は、がん細胞に対する免疫細胞の攻撃力を強化することで、治療成果を示しています。

本記事では、PD-1抗体とそのがん治療への応用について詳しく解説します。

目次

PD-1抗体とは

PD-1抗体は、免疫細胞の一種でもあるT細胞上のPD-1に結合し、免疫チェックポイントを抑制します。

混同しやすいPD-L1抗体と働きは似ており、がん細胞と免疫細胞の間のシグナル伝達を阻害することで、がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを高めます。

PD-1抗体はT細胞の表面のPD-1というタンパクに結合します。

一方、PD-L1抗体はがん細胞や抗原提示細胞の表面のPD-L1というタンパクに結合します。

PD-1とPD-L1の結合を阻害することで、がん細胞を攻撃するT細胞のブレーキが外れるのです。

PD-1はPD-L1やPD-L2の両方と結合できる一方、PD-L1抗体はPD-1とPD-L1の結合のみを遮断し、PD-1とPD-L2の結合は影響しません。

代わりに別のタンパク質であるB7-1との結合を妨げることが分かっています。

つまり、PD-1抗体とPD-L1抗体は作用の仕組みが異なるものの、ともにがん免疫療法の中心的な役割を果たす重要な薬剤です。 

参考:国立がん研究センター

参考:がんプラス

参考:アストラゼネカ株式会社

PD-1とがん免疫療法の開発

ここからは、PD-1とがん免疫療法の開発についてご紹介します。

PD-1とは

がん細胞は、免疫細胞の攻撃から逃れる巧みな方法を持ち合わせます。

そのひとつが、T細胞の表面にあるPD-1というタンパク質の利用です。

正常な免疫反応では、PD-1が免疫のブレーキとして働きます。

ところが、がん細胞はPD-L1と呼ばれる別のタンパク質を作り出し、T細胞のPD-1に結合させることで、攻撃を抑制しているのです。

つまり、がんはPD-L1によってT細胞のアクセルとブレーキを自在に操ることができてしまうのです。 

そこで、PD-1への刺激を遮断する抗PD-1抗体が開発されました。

これにより、T細胞の本来の攻撃力を取り戻し、がんと戦うことができるようになったのです。

参考:京都大学大学院医学研究科附属 がん免疫総合研究センター

参考:abcam

PD-1とがん免疫療法の歴史

がん免疫療法は、がん治療の歴史において大きな変革をもたらしています。

従来の化学療法が、がん細胞を直接攻撃するのに対し、免疫療法は人の免疫力そのものを利用してがん細胞を排除しようとする画期的な方法です。

正常な細胞へのダメージが少なく、多様ながん種に適用できる点も大きなメリットです。

がん免疫療法が本格的に注目されるきっかけとなったのが、PD-1という免疫抑制分子の発見でした。

この分子をブロックすることで、がん細胞を攻撃する免疫細胞のブレーキが外れることが分かったのです。 

PD-1を標的とした抗体薬は世界的に100兆円規模の巨大市場へと成長する予測が建てられています。

今後も他の薬剤との併用で、より効果を高める研究が進められていくことでしょう。 

参考:京都大学大学院医学研究科附属 がん免疫総合研究センター

PD-1抗体の臨床試験と成果

京都大学の研究グループはプラチナ抵抗性の再発・進行卵巣がん患者20人に対して、抗PD-1抗体「ニボルマブ」を使用した医師主導治験を行いました。

その結果、2人に腫瘍完全消失、1人に縮小が確認されています。

抗がん剤に抵抗性を示す卵巣がんの治療方法として、PD-1/PD-L1経路を標的にする免疫療法の可能性を示したこの研究は、新たな卵巣がん治療法確立のための貴重な物となりました。

生存期間の中央値は無増悪生存が3.5ヶ月、全生存が20.0ヶ月であり、特に高用量群で良好な結果が見られました。

また、PD-L1の発現と治療効果の間に相関は見られていません。

安全性も確認されましたが、副作用として肝酵素上昇や甲状腺機能低下症などが浮き彫りとなっています。

この事例はあくまでも一例であり、さまざまな臨床試験からPD-1抗体のはたらきが期待されています。

参考:卵巣がんに対する抗 PD-1 抗体(ニボルマブ) 免疫療法の有効性と安全性 

PD-1抗体による治療の課題

PD-1抗体を用いた治療の効果を受けられる患者は約20%にとどまっています。

高額な医療費も課題であり、社会全体での負担増加につながることもあるでしょう。

さらに、治療効果が期待できる患者を事前に識別する確かな診断法の欠如や、効果が見込めない患者への代替療法の不足は、患者個々の最適な治療法を見つけ出すうえで大きなハードルです。

これらの課題に対応するためには、より効果的で副作用の少ない治療方法の開発と、経済的負担を軽減する医療制度の見直しが求められています。

PD-1抗体の使用における解決策として、免疫アクセルとして機能するがんワクチンとの組み合わせなど、複合免疫療法の研究が進められています。

これにより、治療効果を高めると共に、ターゲットとする患者の範囲を広げることが期待されます。

しかし、これらの進展をもってしても、治療に伴う高額な費用や、治療が困難な患者への対応策は、引き続き大きな課題であることに変わりありません。

PD-1抗体によるがん治療は大きな可能性を持ちながらも、その普及と発展のためには、科学的な研究だけでなく、社会的・経済的なアプローチも同時に重要です。 

参考:産総研

参考:一般社団法人 日本経済団体連合会

PD-1抗体のがん治療を検討してみましょう

がんとの闘いは決してやさしいものではありません。

しかし、PD-1抗体のような先進的な治療法により、期待感が高まっています。

がんに関しては最新の治療法について医師と積極的に話し合い、最適な治療選択を探ることが重要です。

PD-1抗体治療の可能性を考えてみてはどうでしょうか。

  • URLをコピーしました!
目次